なにかひとつアツくなれるもの~映画『ミッドナイトスワン』を観て

内田英治監督の映画『ミッドナイトスワン』を観た。
物語の概要は他サイトに任せるとして、感じたことを書いていく。

https://eiga.com/movie/92113/

今作は草なぎ剛演じるトランスジェンダーの主人公・凪沙と、新人俳優・服部樹咲が演じるネグレクトを受けている少女・イチカの二人の物語が進む。
LGBTQAが社会的注目を受けてる中、トランスジェンダーを描くことにより、そっち方面に突き進むこともできたのに、それとは違う映画だった。
"なにかひとつアツくなれるもの"を手に入れた人間の話だと感じた。

イチカはネグレクトにあい、自分の気持ちを上手く表現できない。
最初はしゃべることもできず。不快感を感じたときは、とりあえず相手に椅子を投げつけ、抱えきれなくなったときは自傷行為に走る。
誇張されて描かれてはいるが、不満を持ったとき、どう表現すればいいのか分からないのは同じだ。
椅子を投げつけるイチカを見たとき、オレはグッジョブと親指を立てずにいられない。
そして自らを痛めつける彼女を見たとき、自分に近い何かを感じてただけに、得も言われぬ気持ちになる。

そしてバレエという、彼女がアツくなれるものを見つける。
それから物語は一転する。
着々と実力をつけるイチカ、バレエを習うことにより人と交わり変わっていく環境、徐々に口数が多くなるイチカ、人とのふれあい、そして恋心を覚える。

社会人を数年やってて、オレに映画があって本当によかったなと心底思う。映画がなきゃスガラムルディなんてやってないし、知り合わなかった人たちも大勢いるだろう。
もし映画がなきゃオレはどうなってたんだろうか。
ただただ日々の仕事をこなして、すり減っていく自分しか想像できない。部屋にこもって、日々の不満をためて、SNSに誹謗中傷を書き並べてたかもしれない。
しかし今オレには映画があって、映画観て、感動して、何かを学んで、人とふれあっている。オレは半径1mくらいだけでもいいから、映画で学んだ"もう少しより良い世界"に変えていきたいと考えている。

なにかひとつアツくなれるものがあるか?
それはゲームでもテレビでも音楽でも映画でもバレエでもいい。
心底惚れこんで、影響されて、それによって外の世界を知ることができるんだ。

今作からは、そんなことを受け取った。

しかし今作はそれだけではない。
今挙げた内容なんて、30%にも満たない。
ここから予想だにしない展開が待っている。
観たあと誰かに優しくなれる、そんな映画だ。

気になる点は多々ある。
イチカの成長っぷりはビックリするほど凄まじい。そんな一朝一夕に身になるもんかよとか、同級生の展開はもっと描いてもいいのではとか思うが、そんなんどうでもいいんだ。
そんな些細なことをぶっ飛ばしてくれるほど、今作は魅力的なナニカを持っている。

ぜひ観てほしいけど、札幌は今日(11月12日)で上映終了。マジかー!!!